琴浦町には“秘境”と呼ばれる場所がある。旧東伯町を貫流する加勢蛇川の上流部、だいたい大山滝から源流部の駒鳥小屋下のあたりまでの渓谷がその秘境である。秘境には『地獄谷』という名前がつけられている。
大山滝から登山道を山奥へ、山奥へと40分ほど歩くと、大正時代に植林されたというヒノキ林の中に、大休峠方面と地獄谷方面への分岐点・大休口(おおやすみぐち)がある。地獄谷方面へ歩を進めれば10分ほどで谷底に着く。そこにはず〜っと昔に造られた砂防えん堤があり、6号という冠がつけられている。
地獄谷のえん堤には造られた順に1号,2号,3号とつけられているそうだ。台風なら○号でもこらえれるけど、秘境にあるえん堤なのだからせめて米国のハリケーンみたいにちゃんとした名前があってもいい。
ん?今からでも遅くはないか。昭和の初めの頃の築造らしいから、『むつみ』なんてのがいいかも。となると、1号は『いちよ』、2号は『ふたゑ』・・・まてよ。1号は『ひとみ』の方がいいかも・・・でもハイカラ過ぎるか・・・誰も止めてくれんので話を先に進めることにする。
普通、地獄谷を歩く、と言えばその『むつみ』こと6号えん堤から上流方面へ向かって流れをさかのぼって行く。僕自身これまで何回も地獄谷を歩いたが、すべて『むつみ』と駒鳥小屋の間を上ったり下ったりしただけだ。でも今回はその『むつみ』から下って大山滝まで行こうというのである。地図で見るとわずか500〜600m。なんてことはない。
歩きなれた道といつものメンバー。目的地はすぐそこ。ハイキング気分で山の話、川の話、海の話、生き物の話その他いろいろしながらブラブラと歩いた。
1匹目は吊橋の手前にいた。土色をしたイボイボの大きいやつ。そう、ヒキガエルである。正確に言えばニホンヒキガエル。この辺ではガマガエルとも呼ぶ。
体長(背中の長さ)12、3cm。立派な成蛙だ。喜んだのはロドニー隊員だった。米国ではこんな大きなカエルを見たことがなかったという。小前隊員も加わってケータイを横にしたり斜めにしたりして、あろうことか棒切れでつっついたりもして、なんとかいいアングルで写真を撮ろうと必死になっている。ヒキガエルにしてみれば何とも迷惑な話で、最初はじっと耐えていたが、しまいにはひとっ飛びして大きな体を反転させ、谷の方へ下りていってしまった。
2匹目は、地獄谷の底に下りる手前で、僕(先頭)のすぐ後ろを歩いていた谷口隊員が足で引っ掛けた。生き物はアリでさえ殺さない谷口隊員だからほんとに偶然だったのだろう。
後で『ガマの油』を出して治すのかもしれないけど、当のヒキガエルにとってはまたまた大迷惑。何よりも、ロドニー隊員と小前隊員のとめどないシャッター攻撃にはうんざりしていた(たぶん)。
ヒキガエル3匹目は川原。言っておくが、いくら山に足繁く通ったところで、そう何度もヒキガエルに遭えるもんじゃない。年に1,2匹出遭えれば上等である。それがたったの1日で、しかも1時間ほどの間に3匹である。もちろんマムシも珍しい。
で、そのヒキガエル3号(『みつえ』と名づけようかな)は例のシャッター攻撃に耐えかねて直径50cmほどの石の下に逃げ込んだ。それからの話は・・・あまりにも恥ずかしいので書かないことにする。
少し飽きてきたけど4匹目の『しのぶ』=写真は、すっかり観念したのか大人しく写メにおさまっていた。
▲この日四匹目のヒキガエル「しのぶ」ちゃん
いかん。ヒキガエルのことばかり書いていたら残りの行数がわずかになってしまった。そうだ、大山滝を目指したのだった。
地図を見ると滝までは500〜600m。楽勝のはずだった。でも、途中、高さ10mはあろうかという巨大なえん堤が待ち受けていた。
▲こんな巨大なえん堤があったとは驚きだった
何号かはわからない。だから名前もつけないことにする。そのえん堤の右岸を迂回するのが骨だった。だから大山滝の上にたどりつくのに、地獄谷に下りてから2時間以上もかかってしまった。でも滝までの渓谷の美しさは地獄谷の中でも別格。まさに秘境中の秘境だった。
それでも拾う神あり。浦安駅前の岡田医院に受け入れてもらえることになり、2時間かけて点滴で解毒することになった。ぶっとい針を腕に入れられ、天井を見ながら、ふと考えた。
「なんで僕が襲われたのだろう」と。
確かに無謀にも黒いTシャツを着ていた。でも他にも黒っぽい服装をしていた隊員もいたじゃないか・・・。
そうだ。ヒキガエルだ。
ロドニー隊員と小前隊員の悪行がヒキガエルのたたりとなって隊長の僕に跳ね返ってきたのに違いなかった。監督不行き届きの代償である。そう言えばヒキガエルのイボイボには毒があるという。マムシももちろん毒持ちだ。そしてスズメバチの毒。うーむ・・・まさに毒のトライアングル。
1か月たった今でもスズメバチは僕の腕と背中に痕跡を残している。スズメバチ恐るべし。そしてヒキガエル恐るべし。ついでにマムシも恐るべし。
大山滝から登山道を山奥へ、山奥へと40分ほど歩くと、大正時代に植林されたというヒノキ林の中に、大休峠方面と地獄谷方面への分岐点・大休口(おおやすみぐち)がある。地獄谷方面へ歩を進めれば10分ほどで谷底に着く。そこにはず〜っと昔に造られた砂防えん堤があり、6号という冠がつけられている。
地獄谷のえん堤には造られた順に1号,2号,3号とつけられているそうだ。台風なら○号でもこらえれるけど、秘境にあるえん堤なのだからせめて米国のハリケーンみたいにちゃんとした名前があってもいい。
ん?今からでも遅くはないか。昭和の初めの頃の築造らしいから、『むつみ』なんてのがいいかも。となると、1号は『いちよ』、2号は『ふたゑ』・・・まてよ。1号は『ひとみ』の方がいいかも・・・でもハイカラ過ぎるか・・・誰も止めてくれんので話を先に進めることにする。
普通、地獄谷を歩く、と言えばその『むつみ』こと6号えん堤から上流方面へ向かって流れをさかのぼって行く。僕自身これまで何回も地獄谷を歩いたが、すべて『むつみ』と駒鳥小屋の間を上ったり下ったりしただけだ。でも今回はその『むつみ』から下って大山滝まで行こうというのである。地図で見るとわずか500〜600m。なんてことはない。
◇ ◇
参加者は写真の6人。忘れもしない9月21日。一向平を8時半に出発した。歩きなれた道といつものメンバー。目的地はすぐそこ。ハイキング気分で山の話、川の話、海の話、生き物の話その他いろいろしながらブラブラと歩いた。
1匹目は吊橋の手前にいた。土色をしたイボイボの大きいやつ。そう、ヒキガエルである。正確に言えばニホンヒキガエル。この辺ではガマガエルとも呼ぶ。
体長(背中の長さ)12、3cm。立派な成蛙だ。喜んだのはロドニー隊員だった。米国ではこんな大きなカエルを見たことがなかったという。小前隊員も加わってケータイを横にしたり斜めにしたりして、あろうことか棒切れでつっついたりもして、なんとかいいアングルで写真を撮ろうと必死になっている。ヒキガエルにしてみれば何とも迷惑な話で、最初はじっと耐えていたが、しまいにはひとっ飛びして大きな体を反転させ、谷の方へ下りていってしまった。
2匹目は、地獄谷の底に下りる手前で、僕(先頭)のすぐ後ろを歩いていた谷口隊員が足で引っ掛けた。生き物はアリでさえ殺さない谷口隊員だからほんとに偶然だったのだろう。
後で『ガマの油』を出して治すのかもしれないけど、当のヒキガエルにとってはまたまた大迷惑。何よりも、ロドニー隊員と小前隊員のとめどないシャッター攻撃にはうんざりしていた(たぶん)。
◇ ◇
足蹴にされたヒキガエルを見送ってすぐ、今度はマムシの夫婦(たぶん)に出くわした。われわれが歩いているすぐそばの崖を、舌なめずりをしながらゆっくり移動しているではないか。ひとつ間違えば大事になっていたかもしれなかった。ヒキガエル3匹目は川原。言っておくが、いくら山に足繁く通ったところで、そう何度もヒキガエルに遭えるもんじゃない。年に1,2匹出遭えれば上等である。それがたったの1日で、しかも1時間ほどの間に3匹である。もちろんマムシも珍しい。
で、そのヒキガエル3号(『みつえ』と名づけようかな)は例のシャッター攻撃に耐えかねて直径50cmほどの石の下に逃げ込んだ。それからの話は・・・あまりにも恥ずかしいので書かないことにする。
少し飽きてきたけど4匹目の『しのぶ』=写真は、すっかり観念したのか大人しく写メにおさまっていた。
▲この日四匹目のヒキガエル「しのぶ」ちゃん
いかん。ヒキガエルのことばかり書いていたら残りの行数がわずかになってしまった。そうだ、大山滝を目指したのだった。
地図を見ると滝までは500〜600m。楽勝のはずだった。でも、途中、高さ10mはあろうかという巨大なえん堤が待ち受けていた。
▲こんな巨大なえん堤があったとは驚きだった
何号かはわからない。だから名前もつけないことにする。そのえん堤の右岸を迂回するのが骨だった。だから大山滝の上にたどりつくのに、地獄谷に下りてから2時間以上もかかってしまった。でも滝までの渓谷の美しさは地獄谷の中でも別格。まさに秘境中の秘境だった。
◇ ◇
悲劇は滝からの帰り道におこった。なんと僕がスズメバチに襲われたのである。腕と背中を6か所刺された。スズメバチはおろかハチに刺されたのは初めての経験。痛いの痛くないのって(どっちだいや?)めちゃくちゃ痛くて、車の中で医者を探しながら山を下りたのはいいけど、時は午後2時。104で番号を尋ねながら旧東伯町の医院に片っ端から電話すれどもすれども、休憩中だから対応できないというつれない言葉が返ってきた。それでも拾う神あり。浦安駅前の岡田医院に受け入れてもらえることになり、2時間かけて点滴で解毒することになった。ぶっとい針を腕に入れられ、天井を見ながら、ふと考えた。
「なんで僕が襲われたのだろう」と。
確かに無謀にも黒いTシャツを着ていた。でも他にも黒っぽい服装をしていた隊員もいたじゃないか・・・。
そうだ。ヒキガエルだ。
ロドニー隊員と小前隊員の悪行がヒキガエルのたたりとなって隊長の僕に跳ね返ってきたのに違いなかった。監督不行き届きの代償である。そう言えばヒキガエルのイボイボには毒があるという。マムシももちろん毒持ちだ。そしてスズメバチの毒。うーむ・・・まさに毒のトライアングル。
1か月たった今でもスズメバチは僕の腕と背中に痕跡を残している。スズメバチ恐るべし。そしてヒキガエル恐るべし。ついでにマムシも恐るべし。