2004年12月20日月曜日

登山隊絵葉書をつくる〈Peak.21〉



 12月の初め、逢束のTさんから「加勢蛇川にサケが上りよる」という情報(ネタ)が寄せられた。
 今年に限らず、以前から加勢蛇のサケ遡上情報は何度も耳に入っていたが、発信元が特定できず、なんだか“ガセ”っぽくて信用できなかった。
 今回のは信頼できる筋からのネタである。でも実際にこの目で見なくては何とも言えない。大きさから言えば、サクラマス(ヤマメの降海型)やアメマス(イワナの同型)である可能性も否定できないからだ。
 魚種を特定するためには、捕まえるか水中撮影するかしかないが、河口付近の水は臭くて汚いから、死んでも潜る気にはならない。ということは捕まえるしかないのだ。
 捕まえたら食うのが仁義である。キャッチ&リリースは偽善でしかない。 
 キャッチ&イートこそが人の道なのだ。食わないのなら捕まえなきゃいい。
 サケの料理といえば…やっぱり塩焼きか。それとも北海道を真似てミソ仕立ての“ちゃんちゃん焼き”?刺身もいいな。ん?でも寄生虫とか危ないかな?イクラは醤油漬か…なんて“捕らぬ狸の皮算用”じゃなくって、捕らぬサケを料理しながら加勢蛇の河口へ車を走らせた。
 魚種は何であれ、川に大きな魚が泳いでいるのを見るとなんだかワクワクする。で、ワクワクなりかけていたら川の色が真っ茶色。山陰道の工事のにごり水が加勢蛇を覆っていたのだ。同時に、サケを探す企画もにごり水の中に消えた。
◇      ◇
 ということで、「琴浦・大栄両町の風景を絵ハガキサイズに切り取ろう」という企画がピンチヒッターとして登場した。
 テレビなのになぜ絵ハガキ?と思う人も多いだろうが、切り取らなければ無粋なものやら汚いもの、色んなものが映りこんでしまうんだから仕方ない。
 地蔵峠でクリアな山景色を堪能した後、谷口隊員のおすすめスポットである大栄町の瀬戸へ向かった。金毘羅さんから見た“由良川込みの街並み”が「なんとも言えない」という。3度の飯より野鳥が好きなだけあって、好きな景色もやはり俯瞰図。つまり“鳥の眼”である。
 階段を上っていくとじきの間に境内に出た。金毘羅さんは遠くから見るとそれなりに高い位置にあるように見えたが、なんだか低いゾ!
 なんて思っていたら、なんともあっさり「ここ」という声が聞こえた。


▲金比羅さんから見た由良川と街並み

 「えっ?ここ?」
 「そう、ここです。素晴らしいでしょう」
 「うーん・・・」
 多くは語るまい。感性は十人十色。どんな絵ハガキがあってもいいのだ。石州瓦の家並みはなかなかいい味出しているではないか。
 その後、田村隊員の船上山。僕の大山滝と巡ったが、やはり谷口隊員の絵ハガキはある意味出色であった。

 
▲千丈のぞきから


▲中段から見た大山滝

◇      ◇
 もうすぐ春。旅立ちの春。琴浦と大栄でも多くの人たちが故郷を後にする。
 彼らの、そして彼女たちの心の中に、故郷はどう刻み込まれているのだろう。
 一つだけでいいから、人との出会いだけでなく、海に、山に、川に、街並みに、素敵な思い出を持ってほしい。



 番組を通して伝えたかったのは、一人一人が“自分の一枚”を探してほしい、ということ。探す意欲さえあれば、きっと“自分だけの一枚”が見つかるし、きっとこの故郷を好きになれるに違いない。
 いつの日か、絵ハガキサイズに切り取らなくてもいい故郷の自然や街並みが、しぜ〜んにそこらじゅうに溢れていたら・・・と思う。