2007年6月16日土曜日

アユと巻貝〈Peak.49〉



 6月1日は、全国のほとんどの河川でアユ漁が解禁になる。加勢蛇川も洗川も勝田川も黒川も。もちろん由良川だって。
 9時頃、加勢蛇川に行ってみた。左岸に車がずらり。見渡したところざっと30人が竿を出していた。いつもの年なら、9号線の上手にも釣り人がいるのに今年はゼロ。旧道の橋の上から川を覗いてみたら、案の定アユの姿は1匹も見えなかった。
 5月の中頃から気にはなっていた。JR橋上手のえん堤にチャレンジする稚アユの姿が一匹もいなかったからだ。
 そのえん堤には魚道がなく、100%の水がコンクリートのスロープを流れている。だから遡上しようとするアユは必死こいてそこを登らなければならない。


【激やせのアユ(加勢蛇川)】

 アユはいくら疲れていても目の前に流れがあれば、それを遡上していく。たとえムダだとわかっていてもサガは変えられない。命燃え尽きるまでチャレンジを繰り返す。
 大小様々織り交ぜて100m置きにえん堤が造られている加勢蛇川を上るのはつらい。目の前の障害を越えられない弱っちいアユは死んでいくだけ。屈強頑強幸運なヤツだけが次のステージへ進むことができる。
 僕より10歳ほど年上の古布庄のおっちゃんに話を聞くと、40年ほど前までは、別宮あたりまでアユが遡上していたという。
 えん堤がなく、水量が豊富だった時代は、おいしい藻をたらふく食って、どんどん力をつけながら、別宮までほいほい上っていたのだ。

◇      ◇

 アユは年魚とも呼ばれ、1年でその一生を終える。
 11月頃、川の下流域で誕生した命は、流れに乗って海に下る。
 冬の間、海でプランクトンなどを食べて育ったアユは、春になると川に入り遡上を始める。サケ科の魚とは違って母川回帰の習性はなく、水が流れていれば、それに逆らって上るという単純な面を持っている。
 川に入ったアユは、初めは肉食性で水生昆虫などを食べるが、しだいに草食性が強くなり、石の表面に付いた藻類を食べるようになる。藻類を食べることで、アユ独特のスイカに似た爽やかな香りが出てくると言われている。
 餌を食べながら上流域まで遡上したアユは晩夏から秋にかけて、大きいものは30cm近くまで成長し婚姻色を身にまとう。特にオスは黒ずんで体表のぬめりがなくなる。
 そして10月頃川を下り、下流域の小石底の緩やかな瀬に産卵する。卵は2、3週間で孵化し海へ出て行くのだ。
 加勢蛇川でもえん堤工事が始まる前までは、毎年こうした営みが続けられていた。今は、加勢蛇川で産卵するアユは1尾もいない。
 何で「いない」って断言できるだいや?と聞かれても、おらんもんはおらんのだからしょうがない。水が少なくて一番最初のえん堤さえよー越さんような体たらくで、誰が産卵なんかするだいや!
 少々下品な言葉使いになってしまった。川の話になると、ついつい興奮してしまうがな。とりあえずは水量さえあれば、アユたちもなんとか遡上していけるのだろうけど、山の降雪量が減ってるし、やっぱ地球温暖化が影響しているんだろうなぁ・・・。


【中尾橋(加勢蛇川)の魚道】
◇      ◇

 今回のロケでは、最初に勝田川へ行った。毎年6月1日には、勝田川河口もそれなりに賑わっている。一度も歩いたことがなかったから、どんな川なのか興味があった。
 でも、持久橋(箆津)の下手に下りてすぐ後悔した。川面にはプラスチック関係、川底には空き缶・ビン関係。話にならんほどゴミで汚れた川だった。

【持久橋(箆津)の下手の堰堤】

 勝田川の上流部は広葉樹林帯だから、水に有機含有量が多く、水量が少ないので茶色の藻がつくのは理解できる。でもゴミは別物。これまで、箆津の海岸がゴミであふれているのは海流の影響かと思っていたけど、川が運んできたものもかなりあるんじゃないかなぁ。
 川が汚れている証拠に、アユはほとんどおらず、汚染に強いハゼ・ヨシノボリ系の小魚が目立った。



 そこには初めて見る巻貝がたくさんいた。川の巻貝といえば、代表選手はカワニナ(にゅーにゃー)だけど、持久橋下手のヤツは巻きが弱く丸みを帯びていた。カワニナみたいに石に付いており、二つ仲良くくっついているのも目立った。
 名前は不明。放送のために図鑑とかネットとか色々調べても、不明。後で箆津に出向いて川周辺に住んでいる人たちに「何て貝?」って聞いても、みんなが「見たこともない」という言葉を返してきた。


【謎の巻貝。イシマキガイ?】

 たぶん、イシマキガイかクリグチカノコ、カバグチカノコあたりなんだろうけど、図鑑の写真と実物を見比べても『帯に短し襷に長し』。
 イシマキガイは鳥取県の準絶滅危惧種に指定されているんだけど勝田川を見る限りでは絶滅はおろか、旺盛な繁殖力があるようだしなぁ・・・。ふたつのカノコは九州とか沖縄にいる貝らしいから、なんか違うような気がするし・・・。
 ちなみに、勝田川の他の場所にもこの貝がいるのかなぁと思って探してみたら、光橋の上手にも生息していた。
 もしイシマキガイだとしたら、水槽に付く藻を掃除する(食べる)のが得意だそうな。ということで、TCCホール内の熱帯魚水槽に8個ほど放ってみたけど、2日経ってもじっとしているだけで仕事をしている様子がない。もしかしたら死んじゃったのかなぁ・・・?
 誰かが南国から持ち帰って放流したものが繁殖していったのかなぁ・・・?
 う〜む、わからん。何でもいいから誰かおせ〜て。詳しくは(53)2565巻貝係まで。