2007年9月15日土曜日

温故知新 大山滝へ…〈Peak.52〉


秋と言えばキノコ、キノコといえば田村キノコ博士!

 大山滝は1990年に『日本の滝百選』に選定された。当時の環境庁と林野庁の後援で、緑化関係団体などによって日本の滝選考会がつくられ、日本各地から応募のあった517の滝の中から100瀑が選ばれたという。県内では他に雨滝(あめだき=鳥取市)も選ばれている。
 選定の基準はわからない。でも大山滝は、二段になって落ちるさまが、なんというか端麗なんだな。
 最近は発泡酒の影響で“淡麗”と間違えそうだけど、端麗とは形・姿が整っていて麗しいこと。う〜ん、まさにその通りで、大山滝はやっぱり端麗なんだな。ん?なんだか山下清みたいだな。
 山下清が大山滝を訪れたことがある、という話は聞いたことがないけど、所在地は琴浦町野井倉字一向平。番地は不明。キャンプ場とほぼ同じレベルらしいから標高は570mほど。
 ところでその大山滝とか一向平周辺で、あまり地元の人を見ないよなぁ、という何気ない会話が今回の番組のきっかけになった。
 僕の場合、この番組のロケに加えて、『らくらく山歩会』やプライベートの山行で、たぶん年に10回くらいは一向平・大山滝ルートを歩く。
 歩けば色々な人とすれちがう。多いのは若いカップル。狭い道を手をつないだりしてニコニコやってくる。最近では犬を連れた人が増えてきた。猫はまだ見たことがない。そして、知った顔にはホントに遭わないのだ。
◇      ◇
 山歩きの良いところは色々あるけど、お金を使わなくてすむこともその一つ。本格的な登山は別として、森林浴的な山歩きだとほとんどお金はかからない。でも今の日本では、『楽しさは金で買うもの』という考え方が蔓延している。知らず知らずのうちに『金がかかるものほど楽しいはず』と思い込まされてしまっているのだ。
 そんな社会に誰がした?な〜んてグチっても始まらない。でも、今のままでいいはずもない。とりあえず自分の子どもに“お金より大切なもの”をどれだけたくさん教えられるか、今そしてこれからの親の役目はこのことにつきるんじゃないかなぁ・・・。
 いかん。山の話に戻ろう。
 せっかく琴浦町には素晴らしい山があるのだから、みんながその恩恵を受ければいいのにと思うのだけれど、町民全員に山に入られても困るから、個人的には放っておきたい気持ちもある。


いざ出発(一向平管理棟)

 それはともかく、なにはともあれ一向平から大山滝までじっくり歩いてみることにした。

登山道の脇にひっそりと佇む「ヤマホトトギス」


なんじゃ、この木?


このあとすばりが刺さるとも知らず棘をつつく谷口隊員

 登山道のルート変更により、以前より距離が若干延びて片道およそ2キロ。吊橋手前の『恐怖の445階段』の出現により、行きはよいよい帰りはこわくなってしまった。さらっと歩いて、行きは40分、帰りは50分の道のりである。
 さてその“恐怖の445階段”の話をせねば。
 有名牛丼屋さんの昔のキャッチコピーに『はやい、うまい、安い』っていうのがあったけど、この階段は『狭い①、狭い②、急だ』で言い尽くされる。狭い①はいわゆる道幅のこと。狭い②は踏み幅のこと。狭いところは20cmほどしかない。


あれ、今、何段でしたっけ隊長?

 断っておくけど工事業者を責めているのではない。たぶんそうせざるを得ない立地等複雑工事条件があったからあーゆー階段になったのだろう。
 で、段数が445もあって、行きは下りだからホイホイ下りれるけど、帰りは中年ならずとも盛大にヒィーヒィー喘いでしまう。当然所要時間も帰りの方が10分よけいにかかることになってしまうのだ。
 ともあれ『百聞は一見にしかず』。一度歩いてみれば全てがわかる。
◇      ◇
 階段を下りれば吊橋。昭和52年に造られたこの橋は今年12月で満30歳を迎える。


吊り橋の上でしばし談笑

 その吊橋を渡り、ちょいと右手に寄り道すれば『鮎返りの滝』がある。なんとも美しいネーミングだけど、ここまで鮎が上ってきていたのは、たぶん加勢蛇川にコンクリートえん堤が一つもなかった昭和の初め頃までだろう。


鮎返しの滝

 本道へ返って、けっこうな急坂を上り切ると『旦那小屋跡』。ここはその昔、たたら師(和鉄製錬職人)が住んでいたそうな。何でたたら師が旦那なのかよくわからないが、この周辺には『金クソ(和鉄製錬後のカス)』が転がっているので、拾って当時に思いを馳せてみるのも面白い。


ズッシリと重い「金クソ」


イタヤカエデとサワグルミの種が絨毯を敷き詰めたように落ちています

 ミズナラやイタヤカエデ、サワグルミなどの巨木ゾーンを過ぎると今度は『木地屋敷跡』。木道を上ると大山道の盛衰を見続けてきた『一丁地蔵』が鎮座ましましている。


一丁地蔵

 大山道の一丁地蔵は江戸末期に作られたものが多く、どれも風化が激しくて顔の部分が完全に欠けてしまっているものが多いが、ここの地蔵様はヒノキの林に守られてきたせいか、端正な顔立ちをうかがい知ることができる。
 さあ大山滝が見えてきた。この滝は、ちょっと眺める位置を変えるだけで、随分違う印象を与えてくれる。
 まずは、汗を拭き拭き一番上から覗き込むように。次は少し下にある展望台に下りよう。3つ目のポイントは、さらに下ってブナの木のそばへ。ここからは正統派大山滝をドーンと見ることができる。


正当派大山滝

 そして最後はやはり鎖をつたって滝つぼへ下りなければ。今は道が整備されて、以前より格段に下りやすくなっているから、ぜひチャレンジしてほしい。


鎖をつたって滝壺へ降りる

 なんだか、安物ガイドブックみたいになってしまったなぁ・・・。9月も下旬だというのに真夏並みに暑いし、仕方ないから終わるかな。


滝壺で昼食タ〜イム