2005年2月16日水曜日

登山隊 浜辺を歩く〈Peak.23〉



 ビーチコーミング=Beach combing=櫛でとかすように浜辺を探索すること。
 毎年2月はビーチコーミングと決めたわけでもないけど、去年に引き続き、なぜか今年も浜辺を歩くことになってしまった。
 2月の雪山は危険すぎるし、川遊びも時期はずれ。撮影に1日しかさけないとなれば、お気軽・お手軽なビーチコーミングしかないのだ。
 というわけで2月16日に琴浦町の箆津海岸に集結した。ん?集結した、なんて書くと、いかにも大人数そうだけど、実は3人。恥ずかしながら我がヒィーヒィー登山隊の最少催行人数になってしまった。
 だから、というわけでもないのだが、勝田川と黒川の間の海岸はゴミであふれていた。この辺の海岸ゴミといえば、ハングル製品と漁具が主流だが、ここはなんと生ゴミまであるではないか。
 黒川沿いと勝田川沿いの両方から車で海岸にアプローチできるここの海岸は、生活ゴミの絶好の捨て場になっているのかもしれない。それにしてもこんな有様では“琴の浦”の名が泣く。
 しかし我が隊もなめられたもんである。去年の逢束海岸では、大きな松の木が半分砂に埋まって、恥ずかしそうにくねくねと身をよじりながら歓迎してくれたのに…今年は生ゴミかよ!
 ビーチコーミング自体、興味のない人から見れば、ゴミを拾ってるようなものなのだから、文句言うな!と言われるかもしれないけど、それにしても生ゴミはいけんで。
◇      ◇
 箆津の海岸には、これといった掘り出し物がなかった。おまけに今にも雨が落ちてきそうな雲行き。歩かなきゃビーチコーミングじゃないよなーと反省しながらも、車で逢束海岸へ急いだ。
 野鳥の次に流木を愛している谷口隊員によると、逢束海岸、とりわけ防波堤の西側は、流木狙いのビーチコーマーにとっての“メッカ”だという。


▲海岸には大きな流木も打ち上げられる(琴浦町逢束海岸で)

 『漂着物学入門』(中西弘樹著=平凡社新書)という本に、大昔の大陸方面からの日本への出入国を調べたデータが掲載されている。
 それによると、日本への入国はすべて秋から冬にかけてであり、とくに10月と11月に多い。これは、冬の季節風が吹き始め、大陸から日本海を渡って航海してくるのに好都合だったからのようだ。
 逆に出国した時期は3月〜8月がほとんど。この時期は南の風が吹き、日本から大陸に向かいやすかった。この傾向は遣唐使にもあてはまるのだという。
 なるほど流木も冬の時期が一番多い。季節風にさらされ、日本海の荒波にもまれ、身を削りながら、ハングルその他の外国ゴミとともに琴の浦にたどり着く。
 “メッカ”には案の定先客がいた。赤碕のMさんだ。知り合いの田村隊員が近寄って話を聞いたら「今日はろくなもんがない」らしい。
 ろくなもんがなかった後の浜を歩くのは、なんとも情けない話で、「ま、価値観は人それぞれだから…」と強がって探し始めたものの、確かにろくなもんがなかった。
◇      ◇
 ところで、この番組表が配られる頃には、TCBホールで『第1回 環日本海流木アート大賞』の展示会が開かれているはずだ。
 『環日本海』はちょっと大げさかな、とは思ったが半分はシャレ。でも残りの半分は大真面目である。
 海岸を歩くと、確かにハングルゴミや廃棄漁具が目立つが、あくまでも“目立つ”だけで、割合的には川から流れ込んだり直接捨てられたと思われる生活関連ゴミが圧倒的に多いのだ。
 ということは、3〜8月には南風に乗って、日本のゴミもかなり出国しているわけで、韓国やロシアのビーチコーマーたちは、日本語ゴミの漂着に辟易しているのかもしれない。


▲海岸に打ち上げられた漂着物を物色する前田隊長(大栄町大谷海岸で)

 この『環日本海流木アート大賞』は、流木を使った作品を展示し、その中からグランプリを選ぶ。しかしそのことだけが目的ではない。
 作品をつくるために、海岸を歩き、流木を拾い集めることで、もう一度ふるさとの海を見つめ直してほしいのだ。
 今年は第1回である。ということは、2回目がたぶん、ある。
 「えーかげんにせー」と言われても3回目も4回目も開きたい。
 何をかくそう、この原稿を書いている時点では、まだやっと実施要項ができただけ。1回目すらちゃんと開けるかどうか、まったく自信がない。
 でも、やっぱり5回目は節目だから韓国で開くべきなんだろ〜な〜。